@misc{oai:phoenix.repo.nii.ac.jp:00001382, author = {小林, 昭子}, month = {2018-09-26, 2019-07-29}, note = {平成30年度, 視野検査は、眼科の基本的検査であり、眼疾患、頭蓋内疾患の診断や経過観察に欠かせない視機能検査の一つである。Goldmann視野計(GP)は、被検者に合わせて検査をすすめられるとともに視野全体を測定できる利便性から現在に至っても多く使用されている。 ただし被検者の自覚的応答により結果が導き出されることから、検者の多様な視野異常についての知識と検査技術が結果に影響するといわれる。しかしながら、そのような知識と技術の向上は、ともに個々の臨床経験に頼っているのが現状である。 経験の少ない検者が確実な検査技術を臨床において習得できる指導法が必要であるが、視野検査技術指導について研究した報告は今までにない。視能訓練士が正確な視野を測ることができるように検査技術を習得できるための教育、つまりGoldmann視野検査による視野検査技術指導の方法論の確立が求められていた。 そこで予備研究として、技術教育においては検査技術の習得度にあわせた指導を行うことが重要であるため、現状把握を行った。まず、学生の動的視野計測に対する理解度の把握に向けて、GPの検査用紙に正常視野と緑内障性視野異常視野を描かせることから検査の基本操作と疾患の知識の実態をとらえた。学生は正常視野を狭くとらえているだけでなく、典型的な緑内障性視野異常をイメージできないものが多く、GPの操作といった基本技術の再確認も必要であった(副論文1)。 次に、臨地実習指導予定者である視能訓練士に対しても同様の方法で動的視野計測についての理解度をとらえた。臨地実習指導予定者である視能訓練士は、緑内障性視野異常の特徴である鼻側欠損とビエルム領域の暗点をほほ全員が記載しており、視能訓練士が緑内障に臨床で多くかかわることで緑内障性視野異常の理解を深め、実測できていることの表れであると考えられた。しかし、測定においては自己流になりやすく、学生と同様に正常視野の範囲および基本技術を再確認しておく必要があると考えられた。同時に指導者として指導の内容を確認するためにも、基本的操作方法を具体的な項目として整理しておく必要性が明らかになり、検査のポイントを表現できることが指導力につながるということが示唆された(副論文2)。 これらのことから、動的視野計測技術の到達度と課題について指導内容の標準化をめざし検討してきた結果を「GPテクニカルチェックシート」に整理した。このシートを使用してグループでの問題解決型学習を行ったところ、検査の到達点を確認することができた。また、なぜ器械の操作に気をつけなければならないのかを問われたり、実測しているところを見学し自分の技術を振り返ったりすることで、自ら考え振り返ることから学ぶ学習の機会をつくることができた(副論文3)。 以上の予備研究により検査練習を繰り返すことの大切さは明白となったが、学生や新人視能訓練士はバリエーションの広い様々な視野異常を知る経験が不足しているのが現状である。また、机上で出来上がった結果を検討するだけでは、視標の移動速度など実際のGP操作についての検証が困難という問題点が残り、検査手技を実技として指導する方法が課題となった。 そこで、我々は練習用視野の作成と、それに対する実際の視野検査を被検者無しに行うことができるようにプログラミングしたGP練習装置を開発した。これは、タブレット入力機器をGPの検査用紙の後ろに入れることで、プロットと検査中のレジスタリングアームの動きに伴う視標の軌跡をパーソナルコンピュータに記録することを可能にしている。 本研究では、このGP練習用シミュレーションシステムを用い、視野検査のすすめ方の一つである視標の動かし方の違いをとらえ、その違いからGPの検査技術指導について検討した。対象である視能訓練士養成校の学生6名と経験年数5年以上で十分な視野検査技術を持っていることを確認した視能訓練士6名が行った緑内障性視野異常の結果から、検査経験の有無による周辺視野の視標Ⅴ/4e、Ⅰ/4e、Ⅰ/3eの動きの差について分析した。 その結果、どの視標も視能訓練士の方が平均プロット数は多く、部位別で視野異常のある下鼻側のプロット数が特に多かった。視標別の平均プロット数はⅤ/4eとⅠ/4e、部位別は上鼻側のⅤ/4e、下鼻側のⅤ/4e、Ⅰ/4e、Ⅰ/3eで学生と視能訓練士の間に統計的有意差がみられた。各プロットの平均視標速度は学生と視能訓練士ともに約5°/sec.と差はなかった。しかし、プロットまでの視標速度の変化をみると、プロット直前は速度が約2°/sec.になっていたものの、学生ではどの視標でもプロット1秒前に減速していくまでは一定の速度を保っていたが、視能訓練士はプロットに近づくほど減速していた。Ⅴ/4e、Ⅰ/4e、Ⅰ/3eと刺激が小さくなるほどその傾向が強く、Ⅰ/4eとⅠ/3eはプロットまでの時間と検査経験により視標速度の変化に差があった。部位ごとを視標別にみると、Ⅴ/4eの上・下耳側でゆっくり動かす傾向があり、下耳側はプロットまでの時間に差が認められた。視野が広い部位でありレジスタンスアームを最大稼動域から動かさなければならないため、経験にかかわらず慎重に動かしていることを反映していた。Ⅰ/4eはレジスタンスアームを動かしやすい上鼻側と上耳側でプロットまでの時間で差があり、下耳側と視野異常がある下鼻側では学生と視能訓練士に差がみられた。Ⅰ/3eになると上耳側では学生と視能訓練士の間に差があり、下鼻側と下耳側では検査経験だけでなくプロットまでの時間の影響が認められた。 GPシミュレーションシステムを用いることにより、プロットするまで学生は視標を一定の速度で動かしていたのに対し、視能訓練士は徐々に減速していたことを初めて明らかにすることができた。見えないところは速く、応答がありそうなところはゆっくり視標を動かしていることから、視能訓練士は検査の際に視野を想定しながら検査を進めていると考えられた。 このシミュレーションソフトは任意に視野結果を取り込むことが可能であるため様々な視野の検査を行うことができる。視野を学ぶために検査練習を行うことは多種にわたる視野結果を知る機会となり、検査経験を補うものとして活用できる。 また、レジスタリングアームの動きを反映できるようにしたことにより、自己の検査経過を詳細に確認することが可能となった。この確認は、測定が不足している部位を理解し、効率よく検査を行うにはどうすればよいのかを考えていくことにつながる。もちろん、GPチェックシートにあげた検査ポイントを確認することも可能であり、基礎的な検査手順を学習することもできる。 今までこのシミュレーションソフトのようにGPの練習を目的に開発されたものはない。これからのGPの検査技術指導の一端を担えるものと考えている。}, title = {Goldmann 視野計シミュレーションシステムを用いた検査技術指導の検討}, year = {} }