{"created":"2023-06-19T08:51:02.386916+00:00","id":1385,"links":{},"metadata":{"_buckets":{"deposit":"680bab3f-f6ae-4fde-bc1b-f84ef190d4ad"},"_deposit":{"created_by":16,"id":"1385","owners":[16],"pid":{"revision_id":0,"type":"depid","value":"1385"},"status":"published"},"_oai":{"id":"oai:phoenix.repo.nii.ac.jp:00001385","sets":["67:129"]},"author_link":["7499"],"item_10006_date_granted_11":{"attribute_name":"学位授与年月日","attribute_value_mlt":[{"subitem_dategranted":"2019-03-19"}]},"item_10006_degree_grantor_9":{"attribute_name":"学位授与機関","attribute_value_mlt":[{"subitem_degreegrantor":[{"subitem_degreegrantor_name":"九州保健福祉大学"}]}]},"item_10006_degree_name_8":{"attribute_name":"学位名","attribute_value_mlt":[{"subitem_degreename":"博士（社会福祉学）"}]},"item_10006_description_10":{"attribute_name":"学位授与年度","attribute_value_mlt":[{"subitem_description":"2018","subitem_description_type":"Other"}]},"item_10006_description_7":{"attribute_name":"抄録","attribute_value_mlt":[{"subitem_description":"1．問題の所在と研究課題\n障害者福祉領域では，「利用者本人を中心とする支援」の理念が志向されている．しかし，支援に\nおいて抑圧的でない「対等な関係」は成立しにくく，支援者から利用者への不適切な権力行使が起\nこりがちである．一方で，支援者が利用者を支配しない，「利用者への支持的な関わり」が成り立ち\n得る可能性は皆無ではない．\n障害者就労支援の先行研究は，一般就労に移行するためのノウハウや制度を提起する論考が主流\nである．筆者は，支援者と利用者の関係性の議論を踏まえた就労支援でなければ，本当の意味での\n「利用者本人を中心とする支援」は実現しにくいと考える．したがって，本研究の課題を，障害者\n就労支援において，利用者と支援者との間にある「非対等な関係性」を乗り越えられる関わりとは\n何であるのか，とする．\n2．研究目的と方法\n本研究は，A 型事業所における利用者と支援者の関係性に焦点をあて，支援者が利用者に不適切\nな権力行使に陥らない関係性の形成，および，利用者が就労支援の中心となるための支援者の支持\n的な関わりのあり方を探求する．そこで本研究の目的は，次の4 点とする．①A 型事業所での利用\n者を中心とする支援のあり方と，それを阻む制度的課題を明らかにする．②文献研究から，支援者\nと利用者との関係が，「支配と服従」の権力関係に陥る背景，および，「利用者を支援の中心」とす\nる関わりを明らかにする．③インタビュー調査研究から，A 型事業所の支援者が取り組む利用者を\n中心とする支援と，利用者が満足感を抱く支援を示す．④被援助者との抑圧のない平等な関係性を\n2\n築こうとする実践モデルである反抑圧的実践（anti-oppressive practice）の概念と実践スキルを援\n用しながら，支持的な関わりについて考察し，新たな知見を探求する．\n3．結果と考察\n第1 章では，A 型事業所における「利用者を中心とする就労支援」のあり方をまとめた．その結\n果，①利用者は，福祉サービス利用者としての権利と労働者としての権利が保障されること，②仕\n事のみならず暮らし全体を支援の視座に含めること，③最大限に力を発揮して仕事に臨め，支援者\nと利用者が対等な人間関係で働く環境を提供すること，そして，④A 型事業所で働き続ける選択と\n一般就労への移行を目指す選択を同等に扱い，それぞれの目的を満たす支援を提供することとされ\nた．こうした実践を制限する制度的課題には，社会福祉基礎構造改革の規制緩和により，支援より\nもサービス提供の効率や経営が優先される傾向にあること，労働者性と利用者性のバランスを取り\nにくい報酬体系があることが明らかにされた．現状の制度設計が，労働市場から排除されがちな利\n用者層を守りきれていないことを指摘した．\n第2 章では，障害者のある利用者への抑圧と，支援者もまた抑圧者であることを明らかにした．\n障害者は，抑圧の構造から逃れられずにいる．そのため，支援者は，マイノリティと対等な協力関\n係を持ちパートナーであることが，抑圧を回避する支持的な関わりの軸であると考えられた．\n第3 章では，意思決定の支援について論考した．その結果，意思決定の支援とは，障害当事者自\n身，そして支援者を含む社会全体の取り組みとして否定的な障害者観の転換を強く求めるものであ\nること，また，支援過程において個人を尊重し，障害当事者と支援者の力の釣り合いを模索しなが\nらの「支援と自律の両立」へと支援者を導く概念であると考えられた．障害福祉サービス事業所が\n意思決定の支援を行う責務は，障害者総合支援法に規定されている．意思決定の支援は法的後ろ盾\nを得た権利であり，障害当事者がその権利について学ぶ機会の保障が喫緊の課題であることが指摘\nされた．\n第4 章では，第3 章を深め，障害者と支援者の関係性の視点から意思決定の支援を考察した．そ\nの結果，①本人と支援者の力関係を均衡に保つために，障害当事者個々に異なる介入すべき「自律\nの能力と自律のための環境」と，干渉すべきではない「障害当事者本人が内在する価値＝選好」を\n理解しながら関わること，②こうした支援が，障害当事者を障害者とカテゴライズするのではなく，\nその存在を一人のひととして承認する価値観に基づいて行われること，③本人は援助者にとって了\n解不能な存在であるため，援助者が「手持ちの理論や既存の専門知に当てはめ表象」する客観性を\n持ちつつも，それだけではない，障害当事者本人と支援者との関わりであると考えられた．\n第5 章では，A 型事業所における支持的・非支持的な就労支援を考察するために，利用者と支援\n者へのインタビュー調査を通して，双方の「利用者中心の支援」への想い，取り組みおよび課題に\nついてSCAT 分析を行った．その結果，利用者が満足している支援者の関わりは，【就労を含む生活\n全体を見る】【配慮をしてもらえる】などの7 カテゴリーが，利用者が願う支援者の関わりは，【私\nが仕事をしたい】【仕事をしたい利用者の気持ちに応えていない制度】などの10 カテゴリーがつく\nられた．支援者の利用者中心の就労支援の取り組みは，【利用者が仕事をする】【利用し続けやすい\n環境づくり】などの13 カテゴリーが，利用者中心の就労支援の課題は，【利用者が職業能力開発機\n会を奪われる】【事業所の厳しい経営】などの7 カテゴリーがつくられた．\n3\nA 型事業所の利用者は，労働者としてのプライドが守られ，福祉サービスの利用者としての権利\nを行使できることを支持的な関わりと捉えている．一方で，利用者は支援者の行為や就労支援施策\nの方向性の影響下にあって，効率や生産性が求められ，働きにくさや生きにくさが生じている．支\n援者は，「利用者を中心とした就労支援」という職業倫理の実践に努めつつも，「『差別と選別と抑圧』\nの加担者」になりがちである．\n支持的・非支持的な就労支援の境界は，事業所内で利用者が「私」として存在できるか否か，支\n援者が干渉が許されない領域をわきまえて介入しているか否かであることが明らかになった．利用\n者の当事者性など内在する価値や生活世界を中心として支援することで，支持的な関わりを生むこ\nとが考察された．支持的な就労支援への展望として，まず，ミクロレベルの関わりとしては，支援\n者と利用者が納期に間に合わせる方法を日々話し合い，利用者が納得できる役割分担の内容と境界\nを決めることが，仕事へのやりがいと利潤追求の両立に寄与すると考えられた．そしてマクロレベ\nルの展開では，A 型事業所の実状に合った報酬体系を検討し，支援者の流出を防ぐとともに，ニー\nズに合致した支援を提供していくことが考えられた．\n4．結論\nパターナリズムへの抵抗や意思決定支援の論考では，利用者を支援の中心に据える支援のあり方\nを示しつつも，利用者の主体を尊重する関係性の構築については課題として残っている．反抑圧的\nな実践は，これらの先行研究の限界を乗り越える手段として有効である．抑圧に抵抗する視点を欠\nいた関わりは支持的とは言えない．そこで，「パートナー関係」，「個と当事者性の尊重」，ならびに\n「制度的抑圧への対峙」という3 つのテーマを，「利用者への支持的な関わり」を成り立たせ，利用\n者と支援者との間にある「非対等な関係性」を乗り越えられる反抑圧的な実践として結論づける．\n反抑圧的実践の軸となる「パートナー関係」は，支援者が「批判的自己内省」を行うことや，利\n用者の「抑圧経験」を理解し「共感」すること，障害当事者を生活の「専門家」と尊重し，当事者\n本人の経験知を用いながら「共同で取り組む」ことである．また，「個と当事者性の尊重」の特徴を\n持つ反抑圧的実践には，「エンパワーする」，「最小限の支援で支える」，ならびに「ピアサポート」\nがある．「制度的抑圧への対峙」は，制度的抑圧に対しては，「批判的自己内省」などミクロレベル\nの反抑圧的実践を強化しても根本的な解決には至らないことから，支援者が制度レベルの抑圧に自\n覚的になり行動することで，利用者を抑圧から守る実践である．ミクロからマクロレベルの抑圧を\n批判的に検討し続けていくことが，本人中心の支持的な関わりの可能性を拓くと結論づけられる．\n「支持的な関わり」の探求から得られた知見は，意思決定支援のように個別のサービス提供の場\n面で支援者の権力性を回避するだけでは支持的な関わりとしては不十分であることを示唆する．支\n持的な関わりとは，支援の関係性に付随する抑圧構造を意識しつつ，支援者が自身の優位性と利用\n者に及ぼす影響を内省すること，障害者本人と協働すること，そして，反抑圧的な支援を可能にす\nる制度設計という3 つの方向性を兼ね備えることが確認された．\n本研究では社会構造から派生する抑圧の視点で利用者と支援者の関係性を論考した．その際，利\n用者の満足や不満をも含め，当事者の視点からの論考を意識した．本研究で見出した反抑圧的な関\nわりは，当事者の経験知に反抑圧的実践の専門知を融合させている．そのため，本研究は当事者性\nを尊重した当事者研究のひとつとして位置づけられ，ここに，本研究の新規性と独自性がある．一\n4\n方，「障害のない職員と同等の就業規則や賃金体系」をも含めての対等性の論考には至っていない．\nこの点が本研究の限界である．抑圧に無自覚かつ無批判であれば，有用な関わりには成り得ない．本\n研究の意義は，A 型事業所の実践における多層な抑圧を顕在化させ，それらを回避する反抑圧的実践\nを明らかにし，利用者と支援者は対等ではない関係にありながらも，利用者を中心とする支援を成立\nさせる可能性を示してきた点にある．反抑圧的な実践の理念を，就労支援事業者の現任研修に活かせ\nる，反抑圧的な実践のアプローチを組み込んだガイドラインの検討と作成が今後の課題である．","subitem_description_type":"Abstract"}]},"item_10006_dissertation_number_12":{"attribute_name":"学位授与番号","attribute_value_mlt":[{"subitem_dissertationnumber":"甲第ツ058号"}]},"item_10006_full_name_22":{"attribute_name":"著者(ﾖﾐ)","attribute_value_mlt":[{"nameIdentifiers":[{"nameIdentifier":"7499","nameIdentifierScheme":"WEKO"},{"nameIdentifier":"9000281368173","nameIdentifierScheme":"CiNii ID","nameIdentifierURI":"http://ci.nii.ac.jp/nrid/9000281368173"}],"names":[{"name":"コンドウ, マスヨ"}]}]},"item_10006_identifier_registration":{"attribute_name":"ID登録","attribute_value_mlt":[{"subitem_identifier_reg_text":"10.15069/00001331","subitem_identifier_reg_type":"JaLC"}]},"item_creator":{"attribute_name":"著者","attribute_type":"creator","attribute_value_mlt":[{"creatorNames":[{"creatorName":"近藤, 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